エベレスト 3D
エンターテイメント的な派手さは少ないものの、エベレストの美しさや山頂付近の過酷な描写は必見。![]() |
原題/Everest
監督/バルタサール・コルマウクル
音楽/ダリオ・マリアネッリ
あらすじ
1953年に世界で初めてエベレストの登頂が行われた。それ以来エベレストは冒険家や登山家によるさまざまな攻略がされ、1990年代には、アマチュアの登山家であっても必要な費用を負担すれば容易に登山に参加できるようになった。
1996年、ネパール。探検家のロブ・ホールはアマチュアの登山家数名を引率し、共にエベレスト登頂を目指す。

出演
ジェイソン・クラーク=ロブ・ホール
ジョシュ・ブリーリン=ベック(登山客)
ジョン・ホークス=ダグ(登山客)
ジェイク・ギレンホール=スコット(ガイド仲間)
エミリー・ワトソン=ヘレン、エリザベス・デビッキ=キャロライン(医者)
エベレストについてのうんちく
・エベレストの標高8000メートル以上は地上に比べて酸素が1/3程度しかない。・つまり、酸素を補給するスピードよりも消費するスピードの方が速い=じっとしているだけで体力を消耗する。
・以上のことから、エベレストの標高8000メートル以上は「人が生きていけない領域=デスゾーン」と呼ばれている。
・標高6000メートル以上では気圧が不安定のため、ヘリが飛ばせない=遭難してもヘリで救助できない。
・エベレストに登るためにはネパール政府に一定額の入山料(日本円換算で1人あたり100万円以上)を支払う必要がある。
・登山ツアー(商業公募隊)を利用する場合は別途費用がかかる。

感想
1996年に実際に起きたエベレスト大量遭難事件を元にした映画。自宅に3Dの視聴環境がないため、2D版を鑑賞しました。元ネタが実話ということもあり、私が本作を鑑賞する前に期待していた雪崩や落石といった映像的に派手な演出は少なかったです。(あるにはあるけど、少ない)
では退屈な映画かというとそんなことはなく、体調が優れないけどこのくらいなら大丈夫だろうと登山を続ける⇒凍死、下山するタイミングが少し遅くなったばかりに猛吹雪にあう⇒凍死など、「ちょっとしたことで人があっさりと死ぬ、なのに映画自体は特に盛り上がることなく淡々と話が進むところ」が妙にリアルで怖かったです。

・登山者の遺体がその辺にころがっている。
※ 山頂付近の遺体は回収されない(というかできない)。
・登山は登る時よりも下山の時の方が危ない。
・「大丈夫、まだ行ける」はこれ以上は危険で引き返すべきところ。
・「ちょっとした油断が命取り」が本当に命取りになる。
など、派手な映像や演出がないからこそ、エベレスト山頂付近の過酷な環境がよりリアルに伝わってくるように感じました。
以上、映画としてのエンターテイメント的な面白さはそれほどではないものの、エベレスト山頂付近の過酷な環境を知ることができる映像ドキュメントのようなものとして、一見の価値がある映画だと思いました。

自分がいる場所よりも下(地上に近いところ)に雲があるのが怖い。
作品オススメ度 ★★☆ 楽しめた
関連作品
生きてこそ 飛行機が雪山に墜落。
デイ・アフター・トゥモロー もし世界が氷河期になったら
ソーシャル・ネットワーク フェイスブック創設のドキュメント。実話。
フローズン ちょっとしたミスが命取り
ノッキンオン・ヘブンズドア 死ぬ前にしたいこと
洋画ドラマ〜へ|★★☆へ
シェルパとは
映画本編で説明がなかったので簡単に。シェルパ族とは、ネパールに住む少数民族のひとつです。現地民だからか高地での生活に適応しており、登山の荷物運びやガイドに雇われることがあるそうです。
参考:Wikipedia シェルパ
登場人物に共感できない
以下はレビューに書ききれなかった愚痴です。本作はベテランガイドのロブ(主人公)がアマチュア登山家数名を引率してエベレスト登頂を目指すのですが、私は彼らの言動にイマイチ共感できませんでした。
・ガイドのロブ
優しくて面倒見の良い性格が災いし、引率している登山家ひとりひとりの気持ちを優先しようとするばかりに冷静な判断ができていないように見えました。
例)
アマチュア登山家のひとりが体調不良を起こす⇒客観的には誰がどう見ても下山した方がいい状態。にもかかわらず、登山家の「次のチャンスはないんだ、どうしても登りたい」の声に押され、ガイドのロブが登頂を諦めさせることができなかった。結果、その登山家は死亡。
その登山家を最後まで見捨てることができなかったため下山が遅れ、当のロブまでピンチに。ミイラ取りがミイラになりました。
・アマチュア登山家のみなさん
全員それなりの登山経験がある、とのことですが、その割に経験豊富なロブの言うことを聞かずにピンチに陥ることもしばしば。わがままで自分勝手な言動が多かったです。
といいますか、そもそも論としてエベレストに登頂するために大金(作中では6万5000ドル=約6〜700万円)を支払って腕の良いガイドを雇い、重い荷物はシェルパに運んでもらうって登山家としてどうなんでしょう?
登山のことなんて何も知らない素人の意見ですが、私は「そんなイージーモードでエベレストに登頂することに何の達成感があるの?困難なことだからこそ、自力で達成することに意味があるんじゃないの?」と思いました。
TVゲームで例えるなら、難易度が非常に高いゲームソフトを強力な課金アイテムと攻略サイトを利用してクリアしたとして、クリアしたことに達成感はあるのか?ということです。
もちろん、登山はスポーツや読書といった数ある趣味のうちのひとつですから、それをどう楽しむかは本人の自由だとは思います。
高いお金を支払ってでもエベレストの登頂に成功したい、登頂に成功することが何よりの目標であり、楽しみというのであれば、他人がとやかく言うことではありません。
しかし、本作に登場するアマチュア登山家の「頂上にたどり着いたときはものすごく嬉しそうにはしゃいだり写真を撮ったりしているけど、その過程はすごく苦しそうであまり楽しんでいなさそうなところ」を見ると。
言い方は悪いのですが、私には、この人たちは「心の底から山登りが好き」というわけではなくて「エベレストに登ったという称号とか証のようなものが欲しいだけなんじゃない?」と見えてしまいました。
「この人たちは、家に帰ったら頂上で撮影した写真を家族や友人に見せびらかすんだろうなー」とまで思ったり。
そのせいで本編中盤の「なぜ危険を冒してまで山に登る?」「そこに山があるからだ!」という映画的には盛り上がるシーンが薄っぺらく見えてしまいました。
※ あくまで本作を見てそう感じただけです。本作の元になった遭難事故で犠牲になった人を中傷する意図はありません、念のため。
以上、登場人物の言動に共感できず、ストレスを感じたところがあったものの、こういったちょっとした判断ミスやヒューマントラブル、自分はまだ大丈夫といった慢心が重なり遭難事故が発生したと思うと、改めてよくできた映画だなあと感じました。
登場人物がみんな「自分の実力を過信せず、冷静に状況を判断し、人の忠告はちゃんと聞く物分かりの良いしっかり者」だったら、本作のような事故はそもそも起こらなかったわけですしね。
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